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雨音と共に

読んだ本の感想などを書き綴っていくブログです

眠りの牢獄

斬新な物語構成で私の心を鷲掴みした『究極の純愛小説を、君に』という小説がございます。その1冊を読んだだけで、作者の浦賀和宏さんに興味が湧きました。

その小説に関しては後日ゆっくりご紹介するとしまして、今回は『眠りの牢獄』をご紹介します。こちらも大変興味深い作品でした。

 

眠りの牢獄 (講談社文庫)

眠りの牢獄 (講談社文庫)

 

 

 

初めに

本作を読み終えたときの心境としては

 

放心

 

の2文字が適切でしょう。

誤解していただきたくないのですが、物語が理解できずに終わってしまい「どういうことだったんだ…?」という意味で放心しているのではありません。

むしろ納得の結末を迎えたにも関わらず、放心しているのです。

イメージとしては「メリーゴーランドに乗っていたはずなのに、急にジェットコースターに変化した」といったところでしょうか。初めからジェットコースターに乗っていればゴールで降りるときには楽しかった、と口にすることができるのかもしれません。しかし、メリーゴーランドの馬が突然、急降下し、縦横無尽にレールの上を駆け巡った後、ゴールに到着したとしたら、どんな気分になるでしょうか。

私はただただ放心しておりました。改めて読み返してみるとこの本はメリーゴーランドではなくジェットコースターであったということを理解することができます。

さすが浦賀和宏先生、と思わず口にしてしまいました。

 

 

あらすじ

浦賀の恋人、亜矢子は階段から落ちてしまい、意識不明の昏睡状態になってしまいます。その事件から5年。友人である北澤と吉野、そして浦賀の3人は亜矢子の兄に呼び出され、地下室に閉じ込められます。ここから出る条件は「誰が亜矢子を突き落としたのか」という答えを出すこと。そして外の世界で計画される交換殺人の真意とは。

 

 

ネタバレなし感想

まだこの作品を読んだことがない方がもしこの記事をご覧になっているのであれば、是非気構えずに、推理しようと思わずに読んでいただきたいと思います。推理をし、結末が見えたとしても、おそらくその2つ上、3つ上を行く結末になっているからです。

先の展開を読もうとせず、今読んでいる一文について自分がどう思ったかだけを考えて読むほうが楽しめるかと思います。これは本作に限ったことではありません。読了後にどう感じたか、それが重要なのだと考えます。ちなみに私は先の展開を推理しようとしても全く当たらないので、どちらにしても楽しめる得な性格をしています。(自慢するようなことではありませんが)

この物語の論点は「誰が亜矢子を突き落としたのか」ですが、終盤に近付くにつれてその論点が変化していきます。この変化の仕方がジェットコースター並みであり、そして綺麗に着地するので放心状態になってしまうのです。こう書いてしまうと何が起こるのか気になって仕方なくなってしまうかもしれませんが、本作を読む時は諦めて怒涛の展開に身を委ねてしまいましょう。

 

 

ネタバレあり感想

ここからはネタバレありで話を進めていきます。解説のようなことができればと思います。未読の方はこの先をご覧にならないほうが良いでしょう。

 

 

この小説はプロローグに浦賀と亜矢子が階段から突き落とされるシーンから始まります。その後、亜矢子に読ませるために書いた小説であると断り、『かつていたところ』というタイトルで物語が始まります。

 

この小説が急展開を迎えたのは17章に入ってすぐのことです。地下室に閉じ込められた3人のうち、北澤が首を吊って亡くなります。亜矢子を突き落としたのは自分である、という遺言が残っていたので2人は北澤が責任を取って自殺したのだと考えました。

メリーゴーランドの馬が急降下を始めたのは終盤に浦賀が訴えたこの一文からでした。

 

「この家の住人に――新堂太一にここに閉じ込められたんです」(p.163)

 

亜矢子の兄、新堂太一は沙羅子をレイプした男だったのです。

ここで地下室に閉じ込められた人達と、交換殺人を企てる2人の女性に初めて接点ができます。これまで別々の問題だと思っていたことが繋がり始めるのです。

さらに18章の初めには冴子の元カレである博の名字が登場します。

 

北澤博は、悩み多き男だった。(p.167)

 

ここまでくると地下室と交換殺人が別々の問題であると考えるのは難しいでしょう。浦賀目線では北澤、吉野、兄と名前の出てこない人達ばかりで、冴子目線では博と名字の出てこない人達ばかりでした。実は私はこれには気付いていたので、地下室の人達と交換殺人の人達は何かしらの関係があるのだろうと推理しておりました。ですが、先ほどにも書かせていただきましたが、私の推理能力というのはその程度なのです。

北澤博は鶸千路沙羅子を騙り、交換殺人の話を冴子に持ち掛けて新堂太一を殺し、冴子を逮捕させることで社会的に抹殺する計画を企てます。動機は遺産目当てです。浦賀、北澤、吉野は新堂に呼び出されて地下室に閉じ込められた、という展開は冴子が新堂を殺したときに自分自身を監禁状態にしておくためのアリバイ作りのために行ったことなのです。

 

ということが判明したところで、もう一段階、急降下します。

突然、ここまでの出来事を小説に書き起こしたかのような書き方をし始めます。その文章を書いているのは浦賀。そして19章に移ってから物語はさらに加速します。

 

浦賀は吉野の所へ行き、北澤を殺したのはお前だ、と言い始めます。そしてそれは様々な証拠により、真実であることが判明します。これだけでもかなりな衝撃なのですが、追い打ちをかけるように5年前に亜矢子を突き落としたのは吉野であることも判明します。そしてその理由が――これがおそらく最大のどんでん返しであると思う方もいらっしゃるかもしれません。

 

吉野は浦賀のことが好きだった。そして5年前のあの晩、浦賀は亜矢子を抱いた。その光景を目撃してしまった。

 

女同士で交わっている異常な光景を。

 

その光景を見た吉野は嫉妬に狂い、亜矢子を突き飛ばしました。

浦賀女性でした。僕という一人称を使っていましたが、このことと著者である浦賀和宏さんが男性であることがミスリードでした。その晩、吉野は浦賀をレイプし、浦賀は吉野を殺します。そしてここまで書いた小説を抱きしめ、浦賀は自宅の屋上から飛び降ります。

 

 

と、ここまでが小説の内容です。ここでいう「小説」とは本作、『眠りの牢獄』のことではありません。初めにタイトル付けた『かつていたところ』というタイトルの小説です。

これが個人的には最大のどんでん返しでした。初めに提示された『かつていたところ』というタイトルの小説のことなど忘れてしまっていますが、その初めにはしっかりと「亜矢子に読ませるための小説」と書かれているので、何も問題ないのです。

最後の展開としては亜矢子が目覚め、浦賀が昏睡状態になるという初めとは逆の展開になります。浦賀は亜矢子と同じ昏睡状態になろうとして飛び降りたのでした。

 

結局物語は何回転したのでしょうね。

主観ですが

1:亜矢子の兄が新堂太一だった

2:北澤が博であり、沙羅子だった

3:地下室の計画は北澤が首謀者だった

4:北澤殺しの犯人、亜矢子を突き落とした犯人は吉野だった

5:浦賀は女性だった

6:この話は全て小説に書かれていたことだった

 

少なくとも6回転はしています。回転という表現もどうかと思いますが。

そしてさらにすごいのはこれだけのどんでん返しの展開をわずか240ページの間で完結させたということです。伏線の張り方も見事でした。

1点だけ、個人的にどうかなと思った点としては、女性の一人称が「」である点です。現実に100%いないとは言えませんが、かなり少数派なのでこれを良しとするかどうかで多少は揉めそうですね。しかし、浦賀女性であることの裏付けができそうな描写というのは作中にいくつか出てきており、またもし浦賀が女性であるという事実に関してアンフェアである、という結論を出したとしても、それを差し引いてもこの作品は素晴らしいものであることは間違いありません。

 

久々にどんでん返しの快感を味わうことができました。本当の快感を味わえた時はやはり放心してしまうものなのです。これがあるから小説を読むことはやめられないですね。

君の膵臓をたべたい

 初めに

かなり斬新なタイトルだったので初めて目にした時からずっと気になっておりました。

最近、話題に上がることが多くなっていたので思い切って読んでみました。 

 

 

君の膵臓をたべたい

君の膵臓をたべたい

 

  

 

登場人物

本作を読んでいて面白いと感じた点は、登場人物の個性でした。私は小説を読み始めてからおそらく初めて、主人公とヒロインの2人の会話をずっと聞いていたい、もっと聞きたいと思いました。それだけそれぞれの個性が輝いており、その2人が出会うことで化学反応を起こし、聞いていて心地よい会話を生み出すのだと感じました。

個人的には会話のテンポの良さが気に入りました。ヒロインは膵臓の病気にかかっておりますが、それをネタに笑いを取ろうとしたり、それを主人公が軽くあしらったりするやり取りが面白いのです。

ヒロインは病気をどう乗り切るかということを考えるより、残りの人生をどう生きるか、そしてこの世界に何を残せるかということを考えて生きているので、とにかく前向きなのです。その姿を見て応援したくなるはずなのに、いつの間にか彼女の言葉に逆に勇気づけられてしまいます

主人公も初めはたまたま彼女の秘密を知ってしまい、そんな彼女と過ごす時間でさえ他人と同じように興味のない素振りを見せますが、やはり最後には彼女の大切さを再認識し、生きる意味を見つけるまでに成長します。ありきたりかもしれませんが、やはり主人公が生きる意味を知った瞬間が最も好きなシーンです。

 

 

あらすじ

他人と関わろうとせず、誰に対してもそっけない態度で接する主人公と、誰に対しても明るく、気兼ねなく接するヒロイン。一見、交わらないように見える2人の人生が、彼女の秘密を知ったことをきっかけに交わった時、初めて生きるということを実感する。そんな物語です。

 

 

タイトル

君の膵臓をたべたい

特徴的なタイトルであったため、1度、目にしてからなかなか忘れられませんでした。

私はこのタイトルを目にしたとき、やはり主人公と同じように「いきなりカニバリズムに目覚めたのか」と思いましたが、当然そのようなことではないと確信しておりました。

物語の初めで、身体の悪い部分を食べると病気が治る、といった話が登場します。実はこの話を知っていたので、タイトルはそう意味なのだと思い込んでしまいました。しかし、そういう意味でもありませんでした。

主人公のヒロインに対する想い、ヒロインの主人公に対する想い、そして「爪の垢を煎じて飲ませたい」ということわざ。この3つが明らかになった時、このタイトルがさらに好きになりました。本当に素晴らしいタイトルだな、と。

 

 

総合的な感想

読了後に表紙のタイトルを見返して思わず目頭が熱くなってしまいました。私もヒロインに憧れを抱くようになり、改めて「生きる」ということを考え直したいと強く思いました。今まではミステリーやSF小説ばかり読んで、青春小説や恋愛小説は「びみょん」と決めつけて読んでこなかったのですが、「うわははっ」と笑えて、目頭が熱くなるほど考えさせられる小説というのも良いなと興味が湧いてきました。こういう風に読む小説の幅が広がるのだな、と実感した一冊でした。自信を持っておすすめさせていただきます。

僕が愛したすべての君へ 君を愛したひとりの僕へ —ネタバレあり—

2冊同時刊行の本ということで、ネタバレありの記事では2冊の感想を同時に書いてみたいと思います。

 

 

 

  

初めに

個人的に、ネタバレなしの感想というのは難しく感じます。面白ければ面白いほどその本の素晴らしさを伝えたいという気持ちが昂るのですが、ネタバレや結末を言わずに魅力を語らなければならないため「本当にこの素晴らしさが伝わっているのだろうか」と不安になるためです。

また、ネタバレしたい気持ちを抑え込みながら、どこまでなら書いても良いかという線引きを誤らないよう気を配っているため、うずうずして仕方ないというのも理由の1つになります。

 

つまり、何が言いたいかといいますと、ネタバレありの感想ではその気持ちを抑え込む必要がなくなるので、堂々と素直な感想が書けるということです。

なので、必ず作品をお読みになってからこの記事をご覧になっていただきたいと思います。

 

 

『君愛』から先に読むことを推奨する理由

基本的にこの作品はどちらから読んでも良いとされていますが、あえて私はおすすめする順番を提示します。

個人的には『君愛』がメインストーリー『僕愛』がサブストーリーであると考えております。

実は『僕愛』のプロローグとエピローグは『君愛』の物語のエンディングになっています。これを踏まえて『僕愛』から読むとどうなるか考えてみましょう。

そうです。メインストーリーである『君愛』のエンディングから読んでしまうことになるのです。当然ながら『僕愛』を読んでいる読者はその物語の始まり、そして終わりであると思い込んでしまいます。さらに、『僕愛』だけではプロローグもエピローグも理解できず、多くの謎を残したまま読み終わることになります。

しかし、『君愛』の最後は時間移動する暦の描写が書かれており、「これからどうなるのか?」という好奇心を抱えて読み終わることができます。

 

つまり「どちらから読んでも良い」というのは

 

『僕愛』から読めば『君愛』を読むことで謎が解ける

『君愛』から読めば『僕愛』を読むことで続きが読める

 

というようにそれぞれ読み終わった後のもう片方に託すものが変わる、ということなのだと考えます。

『君愛』から読むことをおすすめする理由は『僕愛』を読み終えたときに、ストーリーが綺麗に着地して欲しいからなのです。もちろん、『僕愛』から読んだ場合は不鮮明だった事柄が明らかになる瞬間があり、驚く場面はあるのですが、その衝撃とストーリーが着地する瞬間を比べるとやはり綺麗に着地したほうが楽しめるのではないかと思います。

 

すでにこの記事をご覧になっている方は2冊とも読み終えた方だと思うので、今さら読む順番について語らなくてもとは思ったのですが、もし周りにこの本に興味のある方がいらっしゃいましたら『君愛』から読むことをおすすめしていただきたく思います。

 

 

時系列

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説明を簡単にしている部分もありますが、大まかな流れはこの表をご覧になることで掴めるかと思います。絶対に合っている自信はございません。

赤文字で書かれている部分が『僕愛』の主人公、高崎暦の行動であり、青文字で書かれている部分が『君愛』の主人公、日高暦の行動です。表の列は世界を表しているため、並行移動による精神交換が起きた場合、赤文字と青文字が反転します。

少年期、瀧川和音と出会って友達も出来始めて楽しい高校生活を送っている高崎暦が居た反面、別の並行世界では愛する人を失い、助けるために高校を中退して研究に没頭する日高暦が居たのですね。

最後の部分だけ黒文字ですが、これは高崎暦の虚質に日高暦の虚質が融合しているためです。日高暦は時間移動する並行世界に『僕愛』の高崎暦の世界を選びました。そして高崎暦の虚質に佐藤栞の虚質の一部が融合した自らの虚質を融合させることで自分と栞が出会わなく、栞が幸せになる世界を再構築したのです。『僕愛』のプロローグで突然、目の前の女の子が消え、IEPPがエラーを起こすのは日高暦の虚質が融合したからなのです。

 

Steins;Gate』で例えるならば、独立した世界線「シュタインズ・ゲート」へ到達した、といったところでしょうか。やはり似ていますね、この2作。

 

 

タイトルについて

僕が愛したすべての君へ

君を愛したひとりの僕へ

 

久しぶりにタイトルが気に入った作品でした。当然かもしれませんが、本のタイトルは内容に密接に関わっていると考えています。

予想として、初めに「~へ」という言葉を用いているため、何か伝えたい言葉が続くのではないかと考えました。

そして、それぞれの『僕』はそれぞれの暦のことを指しており、それぞれの『君』はそれぞれのヒロイン、和音と栞を指しているのだと考えました。

 

最終的に2つの予想は半分ずつ当たっていると結論付けました。

それぞれのタイトルの言葉はそれぞれの作品のエピローグに登場しておりました。

 

「そして、君だよ和音。僕が愛したすべての君へ、この喜びを伝えたいんだ。君がいてくれたから、僕は今、こんなに幸せですって。」(『僕愛』p.251)

 

「和音を愛した一人の『僕』へ、栞との大切な約束を託して。」(『君愛』p.251)

 

なんと同じページ番号にタイトルのような言葉が書かれていました。

『僕愛』はタイトル通りの言葉ですが、『君愛』は少々変わっております。

『僕愛』は感謝の言葉を繋ぎ、『君愛』は約束を託しました。

 

僕が愛したすべての君へ、この喜びを伝えたい。

君を愛したひとりの僕へ、大切な約束を託す。

 

このような言葉になります。

そして『君』はそれぞれのヒロインではなく、どちらも和音のことを指していたのでした。

和音を愛したひとりの僕、つまり高崎暦へ、栞と再会するという約束を託す。

こうして見ると、やはり『君愛』は『僕愛』に続く物語である、ということがわかりますね。

 

 

総合的な感想

久々の表紙買いだったのですが、大当たりでした。カバーイラストがとても綺麗なので眺めているだけでも楽しむことができます。

2冊同時刊行によりお互いがお互いを支え合って1つの物語を紡いでいく斬新な構成に心が震えました。日高暦の佐藤栞に対する決して揺れることのない一途な愛と、高崎暦の瀧川和音のすべての可能性に対する愛。どちらの愛も美しく、そしてとても強い気持ちを感じました。また、『僕愛』のエピローグを読み、改めて幸せというものを考え直すきっかけになりました。

乙野四方字さんの作品は本作が初でしたが、他の作品にも興味が湧いてきました。機会があり、読むことになった際はまた感想を書きたいと思っております。

 

君を愛したひとりの僕へ —ネタバレなし―

前記事の宣言通り、この小説をご紹介します。

 

 

 

 

初めに

前回の記事でもご紹介しましたが、この2冊の読む順番は

君を愛したひとりの僕へ  僕が愛したすべての君へ

をおすすめします。

 

何故か?という疑問にお答えすると、少々ネタバレになるので、次のネタバレありの記事でご紹介します。

ただ、少しだけ理由をお話しすると、君愛→僕愛の順番に読むほうが綺麗に伏線を回収でき、読了後の気分がすっきりするからです。

逆から読むと伏線を張る前に行動し、その行動に関して後から説明が加えられる(これが伏線)ような状況になり、不完全燃焼となってしまうケースがあります。

 

この2冊の物語はとても緻密に作られているため、その物語を100%楽しむためにはおすすめする順番で読むことが大切であると考えます。

これが逆から読んだ私からのアドバイスです。

 

 

あらすじ

並行世界が立証された世界で、主人公日高暦は両親が離婚した際に父親へついて行くことを選択します。

父親の通勤する研究所に通う中で、ある日、佐藤栞という女性に出会うところからこの物語は大きく動き始めます。

2人は惹かれ合い、恋愛感情を持ち始めた頃にお互いの親同士が再婚するという話を聞きます。このままでは結婚できなくなるという危機感を抱き、2人で親同士が結婚しない並行世界へ逃げようと考えます。

しかし、その並行世界への移動の際に暦は栞を失ってしまいます。

 

何としてでも栞を助けたい。その目的のために暦が奔走する物語です。

 

 

感想

僕愛に比べて少々雰囲気が暗めでしたが、暦が栞を助けるために奔走する姿を見て、人は誰かのためにここまで必死になることができるのだな、とその姿に感動しました。

そういえばこの気持ちをどこかで感じたことがあった気がしました。

本作と同じ並行世界というテーマが作中に出てくるSteins;Gateです。

主人公がヒロインを助けるために様々な手を尽くし、共に助け合い、共に涙する。この作品でそんな姿に感動した覚えがありました。

改めてこの2作を比べてみると、似ている点がいくつかあります。もしかしたら著者の方も多少は影響を受けたのかもしれません。

 

基本的には暦と栞の2人の話なのですが、僕愛で登場した瀧川和音も登場人物に含まれております。暦と和音の関係性について『僕愛』と比較しながら読むのもまた面白いかと思います。

 

初めに『僕愛』を読んだので、その2つを比較した感想をご紹介すると、まさに本のタイトル通りだな、と感じました。

『僕愛』の主人公は様々な並行世界にいる彼女の話、すなわちすべての並行世界について触れていますが、『君愛』の主人公はたったひとりの彼女の話しかしません。

この一見、両極端な物語が上手く噛み合っているところに魅力を感じました。

 

 

さて、次記事では『僕愛』と『君愛』の2つをネタバレありでまとめてみようと考えております。上手くいけばとてもわかりやすくまとめられそうです。年表みたいなものができれば最高ですね。

 

ネタバレありの感想はこちらです。

siuka-hatatoko.hatenablog.com

僕が愛したすべての君へ —ネタバレなし―

初記事がこの小説ということで。

 

 

 

 

初めに

この小説を書店で見かけたとき

 

 

これは絶対面白い

 

 

というインスピレーションを感じました。

 

そもそも私の好きなジャンルがSFなので『並行世界』という文字を見ただけで、有無を言わさず勝手に足がレジのほうへと向いてしまうのです。

同時刊行された『君を愛したひとりの僕へ』も隣に並んでおりましたので、当然のことながら2冊同時購入致しました。

 

しかし、2冊同時購入をしたことによりひとつの問題に直面するのです。

 

 

どちらを先に読むべきなのか?

 

 

表紙をご覧いただければわかると思いますが

「こちらを先にお読みください」

などという順路を示す一文が書かれていないんですね。

それどころか帯にはこんな一文が。

 

 

あなたはどちらから読む?

 

 

それについて延々と悩んでいる私に追い打ちをかける一言です。

 

結局、『JA文庫の番号順』というそれらしい理由をつけて

僕が愛したすべての君へ → 君を愛したひとりの僕へ

の順番で読みました。

 

 

2冊読了後の感想としては

 

 

逆から読んだほうが良かった

 

 

でした。

 

当然、JA文庫の順番通りに読んでも伏線の回収であったりそのときの驚きというものはありましたが、もし逆から読んでいたらもっと驚けたのではないかと思ってしまいます。

まだこの作品に触れておらず、内容もまったくご存じないという方は是非、JA文庫の番号の逆、

君を愛したひとりの僕へ → 僕が愛したすべての君へ

の順番で読むことをおすすめ致します。

 

 

あらすじ

並行世界が立証された世界で、主人公高崎暦は両親が離婚した際に母親へついて行くことを選択します。

彼は友達付き合いがあまりない人生を送ってきましたが、ある日、瀧川和音という女性に出会うところからこの物語は大きく動き始めます。

暦は初対面の和音にまるで旧友のように話しかけられ、困惑してしまいますが、訳を聞いてみると85番目の世界では恋人同士だった、という話を聞かされます。

その一件から暦は和音と親しくなり、今後の人生において大きな影響を与える存在となります。

 

並行世界とは、今いる世界とは別の世界であります。人間は日常的にその並行世界に精神が移動しており、近い並行世界は元の世界との差異が小さく、遠い並行世界は差異が大きいとされています。

例えば、1個隣の並行世界では朝食が米だったかパンだったか程度の差異しかありませんが、30個離れると人間関係がバラバラになっていたりします。

 

「1個隣の並行世界への移動程度なら大した問題はないだろう」

 

そう考える方もいらっしゃるかもしれませんが、その僅かにズレた世界でも自分は自分でいられるでしょうか?

たった1つでも隣の世界から来た人と普段通り接することができるでしょうか?

もしその人がもっと大切な人だったら…?

 

並行世界の人間たちとどう関わっていくか、その答えを探す物語です。

 

 

感想

初めのプロローグで、どんでん返しものにはよくある意味深な台詞や現時点では意味不明な状況が登場します。

こちらとしてもそのような伏線を初めに提示し、物語の後半で鮮やかに回収していただきたい、という期待があったので、掴みはバッチリという印象を受けました。

 

並行世界というテーマをどう扱うのか、がSF好きの私にとって重要なポイントでしたが、架空の科学を導入して説明に根拠を持たせていたので、設定が練られているといった印象を受けました。

しかし、もう少しその設定を生かして複雑な物語にできたのではないかと思ってしまいます。遠い並行世界を行き来して様々な事象が違った世界を渡り歩いたら面白そうだなと思いました。

 

何といっても本作の特徴は2冊同時刊行という点です。本作を読み終わっても物語のすべてを読んだことにはなりません。『僕愛』と『君愛』は2つ併せて1つの物語なので、必ず両方読んでいただきたいです。

初めに伏線について触れましたが、実はいくつかの伏線は回収せずに終わってしまいます。これは結構、衝撃でした。

 

 

次の記事では同時刊行のもう片方『君を愛したひとりの僕へ』を扱うので、本作が気になる方はそちらもご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

ネタバレありの感想はこちらです。

siuka-hatatoko.hatenablog.com

本棚 ~8/2

この記事に感想を書く予定の小説のリストを載せておきます。

個別記事で感想を書きましたらリンクを作成します。

順次追加予定です。

 

読了リスト

殺戮にいたる病:我孫子 武丸

探偵映画:我孫子 武丸

十角館の殺人綾辻 行人

迷路館の殺人綾辻 行人

イニシエーション・ラブ:乾 くるみ

葉桜の季節に君を想うということ:歌野 昌午

究極の純愛小説を、君に:浦賀 和宏

こわれもの:浦賀 和宏

眠りの牢獄:浦賀 和宏

噂:荻原 浩

暗黒童話:乙一

クラインの壺:岡島 二人

僕が愛したすべての君へ:乙野 四方字

君を愛したひとりの僕へ乙野 四方字

倒錯のロンド:折原 一 

星降り山荘の殺人:倉知 淳 

ウェディング・ドレス:黒田 研二 

占星術殺人事件:島田 荘司

斜め屋敷の犯罪:島田 荘司

ハサミ男:殊能 将之

君の膵臓をたべたい:住野 よる

13階段:高野 和明

スロウハイツの神様:辻村 深月

ロートレック荘事件:筒井 康隆

模倣の殺意:中町 信

連続殺人鬼 カエル男:中山 七里

ぼくは明日、昨日のきみとデートする:七月 隆文

七回死んだ男:西澤 保彦

慟哭:貫井 徳郎

この闇と光:服部 まゆみ

仮面山荘殺人事件:東野 圭吾

ナミヤ雑貨店の奇蹟:東野 圭吾

リライト:法条 遥

バイロケーション:法条 遥

忘却のレーテ:法条 遥

チェーン・ポイズン:本多 孝好

片眼の猿 One eyed monkeys:道尾 秀介

ラットマン:道尾 秀介

カラスの親指 by rule of CROW's thumb:道尾 秀介

すべてがFになる:森 博嗣

そして二人だけになった森 博嗣

 

 

著者五十音順

敬称略

雨の降る日に

はじめまして。

 

端所 詩雨歌と申します。

読み方は『はたとこ しうか』です。

 

梅雨の時期、縁側の端のほうに座って詩を詠んでいる人のイメージです。

 

主に読んだ本の感想について自分なりに感じたことを書き綴っていきたいと思っております。

自分は小説好きですが、好きな小説には共通したキーワードがございます。

 

それは

 

 

どんでん返し

 

 

です。

 

鮮やかなトリック、明かされる真実、散りばめられた伏線の回収。

たった一文でそれまで頭の中で築き上げてきたイメージを崩壊させることができるのは小説という文字だけで構成された媒体だからこそ可能なことです。

 

このどんでん返しを食らった瞬間の爽快さはなかなか他のものでは味わえません。

 

このブログではこの『どんでん返し』をテーマとした小説の感想を綴り、このブログを読んでくださった方にもぜひ読んでいただきたいと思っております。

もちろん、どんでん返し以外のテーマの小説も取り扱うつもりです。

 

ちなみに自分の好きなジャンルはSF、特に『時間もの』と呼ばれているタイムスリップやタイムリープなどを扱った過去未来へ跳躍するような物語が好きです。

これは小説に限らず、アニメやゲーム、映画にも好きな作品がたくさんあります。

時間跳躍というのは現時点では不可能な技術であり、もし実現した際に発生するパラドックスをどう扱うのか、どう回避するのかなど自分の考えと照らし合わせながら読んでいたりします。

加えて、ミステリー系も読みます。これはトリックの奇抜さなどを楽しむために読んでおります。そこにもまた、どんでん返しの展開が多くあります。

 

おすすめの本がありましたら、お教えいただけると幸いです。